神奈川県から重点プロジェクトとして支援されている「パワーアシストハンド」のうち、簡単なスイッチ操作で麻痺(マヒ)した手の曲げ伸ばしをサポートするタイプが商品化第1号として2014年6月3日に発売されました。このパワーアシストハンドは、安全で信頼性のある空気圧を使ったリハビリ補助装置です。

パワーアシストハンドの画像

七沢リハビリテーション病院脳血管センターの病院長、山下俊紀先生
七沢リハビリテーション病院
病院長:山下俊紀先生
【メッセージ】
脳卒中(脳梗塞や脳出血など)などで片麻痺(ヘンマヒ)になると日常生活は不自由になります。リハビリを行ってもその回復には限りがあるのも現実です。特に手指の麻痺(マヒ)の回復には難渋しています。しかし、意図して動かす練習を重ねることで、埋もれた神経の活動を引き出せることもあります。リハビリに大切なことは、動かそうという意思をもって、繰り返し続けることです。自分の良い方の手を使ったり、他の人に手伝ってもらって麻痺(マヒ)した手指を曲げ伸ばしさせるのはなかなか大変で続けられません。
パワーアシストハンドを使うと、この反復運動を時間をかけて辛くなく実施することができます。
 
神奈川工科大学先進技術研究所所長、山本圭治郎教授
神奈川工科大学
先進技術研究所所長
山本圭治郎教授
【メッセージ】
お年寄りや障がいをもつ人々のために役立つと思ってハイテクを駆使して開発した福祉機器が、実際には使われていないという現実があります。これは設計者が人間の気持ちや体をよく知らない上に、使う人の身になって考える想像力に欠けていることが原因です。このようなことが起こらないように、人間を中心に考える工学を目的とした私の研究では、人間学、社会学、工学を総合的に学び、人間福祉に役立つ工学・技術を学び、考えていきます。

参考:厚生労働省の脳卒中ってどんな病気?
参考:日本脳卒中学会脳卒中治療ガイドライン

 

どんな時に使えるの?

現在、日本では脳梗塞などの脳血管疾患の患者は130万人以上に達しており(平成20年の厚生労働省調査より)、年間医療費は1兆7,772億円にもなっています(平成24年度の厚生労働省まとめより)。脳血管疾患になると、手足が麻痺(まひ)・拘縮(こうしゅく)する片麻痺(へんまひ)になってしまうことがあります。手指の麻痺・拘縮のリハビリテーション(リハビリ)には、手指をほぐすこと(手指のマッサージ)の継続が大事になってきます。この片麻痺のリハビリ治療において、「回復期」リハビリ後の「維持期」リハビリの継続が、理学療法(PT)士や作業療法(OT)士、介護人の人員及び訓練時間の限度により、難しい状況にあります。患者個人でリハビリを継続することも困難なのが実情です。この「維持期」のリハビリを継続するために、リハビリ補助機器:パワーアシストハンドを使用することができます。
また、脳梗塞は時間との闘いです。(by ノウコウソク・ネット)といわれているため、なるべく早い段階での「急性期」リハビリにおいてもパワーアシストハンドを使用できます。ただし、実際のリハビリでの利用は医師など医療関係者の方に判断していただいてください。

PT(Physical Therapy : 理学療法):病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。(公益社団法人 日本理学療法士協会による定義

OT(Occupational Therapy : 作業療法):身体又は精神に障害のある者、またはそれが予測される者に対し、その主体的な生活の獲得を図るため、諸機能の回復、維持及び開発を促す作業活動を用いて、治療、指導及び援助を行うこと。(一般社団法人 日本作業療法士協会による定義

 

パワーアシストハンドを使用している様子